先日のロンドン市長選挙の結果、労働党のサディク・カーン氏が新市長として選出されました。

イスラム教徒が首長に就任するというのは、ヨーロッパの首都として始めてのことです。

僕はイギリスに住んでいることもあって、このニュースはここ数日TVやネットで多く目にするんですが、僕としてはアメリカに初の黒人大統領が誕生したことと同じくらいの出来事なんじゃないかと思います。

日本でどの程度ニュースになっているか分かりませんが、このムスリムの新市長のニュースについて、感想と共に紹介します。

労働者階級出身の人権派弁護士

カーン氏は、父親がパキスタンからの移民でバスの運転手、母親が裁縫師という、いわゆる労働者階級の出身です。8人兄弟の5番目の子供として生まれ、幼少時は低所得者層向けの団地で暮らしていたそうです。

皇室の血を引き、イートン校出身の生粋のお坊ちゃまくんエリートである現ロンドン市長、ボリス・ジョンソンとはだいぶ違います。

もともとは人権派の弁護士をしていて、2005年から労働党の国会議員として国政で活躍していました。ゴードン・ブラウン政権では、大臣にも任命されました。これは、イスラム教徒としては史上2人目です。

この度のイギリス地方統一選で、ライバルだった保守党のザック・ゴールドスミス氏を破り、時期ロンドン市長となることが決まっています(カーン氏をイスラム過激派と結びつけようとしたゴールドスミス氏の自滅って部分も多いようですが)。

下の動画は、YouTubeのBBC公式チャンネルで見つけたものですが、氏がロンドン市長に当選した後のスピーチ動画です。

彼のスピーチは凄い聞きやすくて、論旨も明快なので、英語を勉強している人なんかはとても参考になると思います。

オバマ大統領とかもそうですが、人々にわかりやすく伝えようとしていて、それが非常にうまくいっています。

多様性に寛容なロンドン市民

今回の選挙で、彼が特別な注目を集めているは、やはりヨーロッパの首都の首長としては初のムスリム(イスラム教徒)だということが大きいです。

移民の子供として苦学して大学に入り、国政で活躍し、世界有数の大都市の首長となった彼の努力や能力は素晴らしいと思いますが、僕が今回それ以上に感心したのは、彼を選んだロンドン市民に対してです。

約900万人の人口を有するロンドンは多くの人種や宗教が入り乱れているとはいえ、やはり多いのは白人で、全体の約半数がキリスト教、イスラム教徒は10%程度しかいません。また、ここ数年ヨーロッパの大都市でいくつかのテロがあり、やはりイギリス内でもイスラム教徒に対する不条理な差別や偏見が問題になることがあります。

そんな状況の中、冷静な判断を下した市民は素晴らしいと思います。地方自治は民主主義の学校と言われることもありますが、ロンドンという街には民主主義がしっかりと根付いているんでしょう。

ちなみに、僕は全くの無宗教だし、労働党シンパでもなく、カーン氏の思想や政策について賛同しているわけではありませんので悪しからず。

事実は小説よりなんとやら

今回のロンドン市長選のように、宗教が一つの争点やポイントになるというのは海外ではよくあることです。逆に日本の場合は各政党が政教分離の原則にのっとって……、あっ(以下自粛)。

地方自治体の町と言えば、日本でも東京都知事がニュースを賑わしています(話変えるの下手……。)。

書きたいことは山程ありますが、あまり楽しい話にならないと思うのでやめます。元都民として悲しくなるだけだし、実際に東京が今どんな空気なのかわからないんで。

一言だけ言うなら、巷間伝えられる「その国の政治家の質はマスコミの質に比例する」っていう言葉はあながち……(以下自粛)。

そう言えば、昨年読んだウエルベックの「服従」という小説が、「イスラム政権が誕生したフランス」というパラレルワールドを舞台にした物語でした(話変えるの下手Part2……。)。

率直に言うと「フランス人はいくつになっても愛だの恋だの言ってめでてえなあ。」っていう感想だったんですが、設定自体はとてもユニークで、野心的な作品だったと思ってました。

ただ、事実は小説よりなんとやら。今回の選挙の結果を見ると、「服従」にあるような世界が近い将来現実味を帯びるてくることもあるのかもしれません。

投稿者 monadmin