一生懸命勉強してるのに、英語が聞けない、話せないと悩んでいる人。それはあなたの英語がしょぼいからではないかもしれません。

例えば、”waitrose”、”ocado”、”sainsbury”の意味が分かるでしょうか?これらの単語は、僕がイギリスでは毎日のように目に、あるいは耳する単語ですが、日本で暮らす人にとっては、あまり馴染みのない言葉だと思います。実は、ここに外国語を使いこなす上で重要な示唆が含まれているんです。

今回の記事では、頑張ってるのになかなか英会話が上達しない理由と何をすれば良いのかについて紹介します。

ネイティブの英語が理解できない理由

英語の勉強に多くの時間を費やしている人は沢山います。にもかかわらず、英字新聞をすらすら読んだり、BBCを聞いてすんなり理解できるという人はあまりいません。

話す方にいたってはもっと酷い状況だと思います。僕もそれなりに勉強してきたつもりでしたが、できない内の一人でした。

そんな僕がイギリスで暮らして分かってきたのは、一生懸命勉強しているのに英語がわからない理由は、必ずしも英語自身に問題があるわけではないということです。

冒頭に挙げた単語は、いずれもイギリスの代表的な全国チェーンのスーパーマーケットの名前です。日本で言えば、ヨーカドーやイオンといった感じで、イギリスで暮らした経験のある人であれば、必ず知っている有名なスーパーばかりです。日常会話やニュースにも頻繁にでてきます。

しかし、これらの固有名詞は学校で習わないのはもちろん、どんな単語本にも載っていません。例えば、海外ドラマのDVDを英語音声で見ていてこれらの言葉が出てきた時、この言葉をもともと知らない人には何を話しているのかさっぱり分からないでしょう。

日本語で話している際には、わからない単語が出てきても、その単語の種類が、人名、店名、流行りの曲名などの固有名詞なのか、あるいはちょっと難しい一般名詞なのかなどといったことがほぼ瞬時に想像できます。その単語を知らなくても、「え、それって誰?」「なに売ってる店?」などとコミニュケーションを続けることができます。

一方、英語では、その単語以外の部分も不確かな中で、その単語の属性を想像することは難しく、「何が分からなくて相手の言っていることが理解できないのかが分からない」という状態になりがちです。

日常会話でもありそうな具体例をだすと、

“I bought a wonderful bangers and mash at marks and spencer yesterday.”

の意味がわかりますか?

イギリス人なら子供でも楽勝です。字できちんと読むと内容がイメージできる人もいるかもしれませんが、ネイティブがこれを話すのをパッと聞いて理解できる日本人はそう多くはないと思います。中学生初歩レベルの簡単な英語構文なのにこの文がわからないのは、もちろん英語そのものが難しいからではありません。

“bangers and mash”、”Marks and Spencer”という言葉に馴染みがないからです。どちらか一方を知っていれば、まだなんとか相手の言いたいことを予想できるかもしれませんが、両方分からないとboughtという単語すらきちんと把握できなくなります。

前置詞のatははっきり発音されないので、いきなり耳にすると、「 マークスとスペンサーって誰だ?」って話になる可能性もあると思います。

bangers and mashは、ソーセージとマッシュポテトのことで、フィッシュアンドチップスに次ぐくらい代表的なイギリスの料理です(下の写真)。そして、Marks and Spencerは冒頭に挙げたものと同じくらいメジャーなスーパーマーケットです。英語の参考書をいくら読んでも見つけるのが難しい言葉です(”bangers and mash”はあるかも)。

固有名詞は本当に難しい

僕自身、イギリスに来た当初は、この国で使われる固有名詞、言い換えるとこの国に関する一般常識が不足していることが原因でコミュ二ケーションがスムーズにいかない場合が多々ありました。

特に、英語は日本語と比べると固有名詞を多く使う傾向にあります。

人の名前がいい例です。例えば、自分の夫だったり妻の話をするとき、日本だったら「うちのダンナが、」「うちの嫁さんが」などという言い方が一般的です。

でも、英語ではすぐに夫なり妻の名前を出すし、まわりの人も「旦那さんはお元気?」じゃなくて、”Is Daniel alright?”といった感じで、その人の名前をそのまま使います。

固有名詞の問題を英語自身の問題と区別するのは難しい場合もありますが、このような言葉の代表的なパターンをリストアップしてみました。

人の名前

これは本当に難しいです。例えば、日本人ならみな知っている芸能人や歴史上の人物を一人ずつ挙げていけば、すぐに数10人はあるいは100人以上になります。

同様にイギリス人なら誰でも知っているという人も同様に数10から100人以上になります。そういう人の名前は、日常会話でもバンバン出てきますが、日本人には馴染みの無い名前が多く、話題になかなかついていけません。

例えば、Jeremy Paxman, Keith Lemon (Leigh Francis), Bradley Walshなどは毎日のようにイギリスのTVにでている超有名人ですが、日本でも知名度はほとんどないでしょう。

また、人名は、発音が文字と対応しない場合があったり、日本で覚えている名前と違うケースが多いことにも注意が必要です。

国、都市の名前

目で見るとわかりやすいですが、耳で聞くだけだと知っているはずの名前もパッと理解するのは結構難しいです。

例えば、中国の都市名などは日本で聞き慣れているものでも、Sichuan(四川), Fujian(福建)などは慣れるまで中国の話をしていることすらわからなかったりします。

ちなみに、イタリアのフィレンチェを英語ではFlorenceと言ったりするのもややこしいですね。

ブランド、店の名前

日本でも欧米のブランドは数多く輸入されていますが、日本に来ていないブランドもまだまだあります。

イギリスではSuperdryという服のブランドが流行っていますが、Superdryと聞いて日本人が思い浮かべるのは「洗練されたクリアな味・辛口」でしょう。

ちなみに、このブランドはBRITISH DESIGN & SPIRIT OF JAPANを売りにしているのですが、中国や韓国には進出しているにもかかわらず、日本にはまだ未上陸です。

車の名前

海外の自動車メーカーの発音が難しいのはもちろん問題なんですが、それ以上に同じ車でも日本と海外では名前が全く違うのがやっかいです。

例えば、トヨタのヴィッツは、VitzではなくYaris、日産のマーチはmarchではなくmicra、マツダのデミオに至ってはDemioではなくMazda2といった具合です。

日本が自動車製造大国というのは有名なので、僕が日本人だと知るといろんな車の話題をもちかけてくれる外国人も多いのですが、意思疎通がなかなか難しいと感じたことが何度もあります。

映画、本のタイトル

ご存知の通り、映画なんかも日本と海外で題名が全く違うことが多いです。

有名どころでは、『千と千尋の神隠し』が、英語圏では”Spirited Away”となります。せっかく日本のアニメの話題をふってくれているのに、理解できないなんてこともありえます。

僕が友人と話していてわからなかったのがディズニー映画の”Tangled”です。これは「からまった」という意味の英語なんですが、どの映画化のことか分かりますか。

この映画の邦題は『塔の上のラプンツェル』です。言われてみればなるほどです。

食材、料理の名前

人参と大根とごぼうを足して3で割ったようなparsnipという野菜のように、イギリスで暮らすようになってから初めて知った食材も結構あります。

料理名についても同じです。

Haggisといったように、その料理名自体が日本では馴染みのないものもありますが、さらにやっかいなのは、puddingのように、似た言葉が日本語にあっても意味が全然違うというものです。

宗教用語、聖書

ヨーロッパでは、いわゆるキリスト教が主流ですので、例えば、イエス・キリストの復活を意味する”resurrection”という言葉、欧州の人はあまり英語が得意でない人でも知っています。

こういった宗教系の単語は山ほどあるのですが、僕を含めて多くの日本人が弱い分野かもしれません。

もちろん、これは単に言葉だけの問題じゃありません。

Good Samaritan laws(良きサマリア人の法)という言葉があります。Wikipediaによる解説を抜粋します。

「災難に遭ったり急病になったりした人など(窮地の人)を救うために無償で善意の行動をとった場合、良識的かつ誠実にその人ができることをしたのなら、たとえ失敗してもその結果につき責任を問われない」という趣旨の法である。

これなんかは、聖書にでてくるサマリア人のたとえ話を知らないと、その内容についてパッと理解することはできないでしょう。

相手の国の背景知識を増やそう

日本を含め、世界の各国はそれぞれ独自の文化を持っているので、国によって前提として持っている知識が違うのは当然です。ヨーロッパでは国が違っても共有している文化が比較的多いのに対して、日本はいくら欧米化してきたとは言え、まだまだ異なるところが山ほどあります。

その結果、特に日本人が欧米の人とコミュニケーションを取る場合、相手の国に関する背景知識の不足によって、意思疎通が難しくなるケースが多いように思います。

逆に言えば、言語だけでなく、その国のカルチャーや歴史など幅広く学ぶことで、イギリス人、アメリカ人に限らず、外国人の言っていることが理解しやすくなるのは間違いありません。今なら、インターネットでいくらでも海外のサイトにアクセスできますし、海外の人とコミニュケーションをとる機会も作れます。教科書や参考書だけではなく、生の情報にも触れてみましょう。

以上、いろいろと書きつらねましたが、結局言いたいことは、英語がわからないのはあなたの英語がダメなせいではなく、固有名詞やその国の一般常識を知らないことが原因かもしれません。世界のカルチャーや歴史を学べば、英語でのコミニュケーションがもっと楽になると思うので、ぜひ英語の勉強の定義を少し広げてみてください。

投稿者 monadmin